第2回 その「運動再開」が危険信号!9月の運動習慣と肉離れのリスク
前回は、猛暑の余波が残す「疲労と脱水」が肉離れのリスクを高めることについてお話ししました。読者の皆さんの中には、「真夏の暑さが和らいだから、そろそろ体を動かそうかな」と考えている方も多いのではないでしょうか。
しかし、その「運動再開」こそが、肉離れという思わぬ怪我を引き起こす大きなきっかけになり得ます。今回は、夏の間に鈍った身体で急に運動を始めることの危険性と、安全にスポーツを楽しむための具体的な方法について、詳しく解説していきます。
朝晩涼しくなったからこそ潜む、身体と脳のギャップ
9月になると、朝晩の涼しさから「もう夏は終わった」と身体が錯覚しやすくなります。しかし、前回の記事でも触れたように、今年の9月は日中の残暑が厳しく、身体にはまだ猛暑の疲労が色濃く残っています。
この時期にスポーツを再開しようとする方々の多くは、夏の暑さで運動を控えていたため、運動能力が低下しています。
- 筋肉の柔軟性の低下 運動量が減ると、筋肉は硬くなり、関節の可動域が狭まります。
- 筋力の低下 継続的な運動がないと、筋力は徐々に落ちていきます。
- 心肺機能の低下 運動不足は、持久力やスタミナを低下させます。
これらの身体の変化を無視して、以前と同じように運動を始めると、「頭では動けるつもりでも、身体がついてこない」というギャップが生じます。このギャップこそが、肉離れという怪我を招く最大の原因なのです。
なぜ、ふくらはぎやハムストリングスは肉離れを起こしやすいのか?
スポーツの場面で最も肉離れが起きやすい部位は、ふくらはぎ(下腿三頭筋)とハムストリングス(太ももの裏側の筋肉群)です。これらの筋肉は、走る・跳ぶ・方向転換するといった、急激な収縮や伸展を伴う動作で大きな役割を果たします。
ふくらはぎの肉離れ
- 症状 「ふくらはぎをバットで叩かれたような」突然の激しい痛み。
- 原因 急なダッシュやジャンプ、つま先立ちでの動作などで、筋肉が急激に引き伸ばされたり、収縮したりすることで発生します。
ハムストリングスの肉離れ
- 症状 「太ももの裏がパンッと弾けたような」痛み。
- 原因 スプリント(短距離走)やキック動作、急なストップなどで、筋肉が過度に伸展されたり、強い収縮を強いられたりすることで起こります。
これらの筋肉は、身体の中で最も大きな力を生み出す部位であり、運動能力の低下した状態で無理な負荷をかけると、筋肉がその力に耐えきれずに断裂してしまうのです。
危険な運動習慣と、安全な再開のためのポイント
多くの人が陥りがちな、危険な運動習慣を認識し、安全な再開のための具体的なステップを踏むことが、肉離れ予防の鍵となります。
危険な運動習慣
ウォーミングアップを省略する
身体が温まっていない状態で運動を始めると、筋肉は硬く、非常に怪我をしやすい状態です。
いきなり全力で動く
「今日は調子がいいから」と、いきなり以前と同じペースで全力疾走やジャンプを試みる。
水分補給や休憩を怠る
涼しさを感じて油断し、水分を摂るタイミングを逃す。
安全な運動再開のための3ステップ
ステップ1 身体の「準備」を万全にする
運動を始める前に、必ずウォーミングアップを行いましょう。
- 軽い有酸素運動 5〜10分程度の軽いジョギングやウォーキングで、心拍数を上げ、全身の血行を促進させます。
- 動的ストレッチ 身体を動かしながら行うストレッチです。例えば、アキレス腱伸ばし、太ももの振り子運動、股関節回しなど、これから使う筋肉を実際に動かして温めていきます。
ステップ2 運動の「強度」を段階的に上げる
いきなりマックススピードで動くのではなく、少しずつ強度を上げていきましょう。
- 最初は低強度から 最初の1〜2週間は、ウォーキングや軽いジョギング、ストレッチなど、負荷の低い運動から始めます。
- 少しずつ強度を上げる 身体が慣れてきたら、少しずつ運動時間や強度を増やしていきます。
- トレーニングメニューの再考 久しぶりの運動の場合は、専門家(パーソナルトレーナーやスポーツトレーナー)に相談して、現在の身体に合ったトレーニングメニューを組んでもらうのも良い方法です。
ステップ3 運動後の「クールダウン」を徹底する
運動後のケアも、肉離れ予防には欠かせません。
- 静的ストレッチ 運動で使った筋肉をゆっくりと伸ばす静的ストレッチを行いましょう。筋肉を傷つけないよう、痛気持ちいいと感じる程度で、20〜30秒間キープするのがポイントです。
- アイシング 運動で負荷のかかった部位に、アイシング(冷却)を行うことで、筋肉の炎症を抑え、疲労回復を早める効果が期待できます。
大有堂鍼灸接骨院から皆さまへ
9月は、運動を再開する絶好のチャンスです。しかし、無理をして怪我をしてしまっては元も子もありません。自分の身体の状態をしっかりと見つめ、無理のない範囲で、少しずつ運動習慣を取り戻していくことが大切です。
もし「久しぶりの運動で不安がある」「身体が硬くて思うように動かせない」といったお悩みがあれば、当院にご相談ください。当院の「全身調整」は、筋肉の緊張を根本から取り除き、柔軟性を高めることで、安全な運動再開をサポートします。
次回の予告
第3回の記事では、9月特有の「気温差」が自律神経に与える影響と、それが筋肉にどう作用するのかを詳しく解説していきます。どうぞお楽しみに!