成長期のお子さんを持つ保護者の方で、「新学期が始まったばかりなのに、膝の痛みを訴え始めた」という経験はありませんか?特に5月は、オスグッド・シュラッター病(以下、オスグッド病)を発症するお子さんが増える傾向にあります。
本記事では、この時期にオスグッド病が起こりやすい原因に焦点を当て、医学的な根拠や日本の研究文献を基に詳しく解説します。

オスグッド病とは?
まず、オスグッド病は、成長期(主に10歳から15歳頃)の活発な男の子、特にスポーツをする子どもに多く見られる、膝の脛骨粗面(膝のお皿の下にある少し出っ張った骨の部分)の痛みです。大腿四頭筋(太ももの前側の筋肉)の強い牽引力が、まだ骨が成長途中の脛骨粗面に繰り返し加わることで、炎症や剥離が生じ、痛みや腫れを引き起こします。
5月にオスグッド病が起こりやすいと考えられる原因
1.新学期と運動量の急激な増加
4月に入学・進級し、新しい部活動やスポーツチームに参加する子どもが増えます。
冬季の運動不足から一転し、急激に運動量が増加することで、まだ成長過程にある骨や筋肉に過度な負担がかかりやすくなります。
特に、ジャンプやダッシュ、ボールを蹴る動作などを繰り返すスポーツ(バスケットボール、バレーボール、サッカー、野球など) は、大腿四頭筋に強い負荷がかかるため、オスグッド病のリスクを高めます。
2.身体の成長と運動量のアンバランス
成長期は、骨の成長が筋肉の成長に追いつかない時期があります。
この時期に運動量が急激に増えると、相対的に筋肉の柔軟性が低下し、大腿四頭筋の牽引力が脛骨粗面に集中しやすくなります。
身長が急に伸びる時期などは、特に注意が必要です。
3.運動強度や頻度の増加
新しいチームや部活動では、基礎体力向上や技術習得のため、練習の強度や頻度が高くなる傾向があります。
十分なウォーミングアップやクールダウンを行わないまま、高負荷の練習を繰り返すことは、オスグッド病の発症リスクを高めます。
4.柔軟性の不足
大腿四頭筋やハムストリングス(太ももの裏側の筋肉)の柔軟性が不足していると、膝関節への負担が増加し、オスグッド病のリスクを高めます。
新しい運動を始める前に、十分なストレッチを行っていない場合などは注意が必要です。
5.気候の変化と身体の準備不足
冬の寒さから一転し、急に暖かくなる5月は、身体が気候の変化に十分に対応できていない場合があります。
身体が十分に温まっていない状態で激しい運動を行うと、筋肉や腱を痛めやすく、オスグッド病のリスクも高まります。
まとめ
5月にオスグッド病を発症する子どもが多い背景には、新学期に伴う運動量の急激な増加、成長期の身体のアンバランス、運動強度や頻度の増加、柔軟性の不足、そして気候の変化と身体の準備不足といった複数の要因が複雑に絡み合っていると考えられます。これらの原因を理解することで、オスグッド病の予防や早期発見につながる可能性があります。
参考文献
日本整形外科学会. (2017). 整形外科診療ガイドライン 2017. 南江堂.
このガイドラインでは、オスグッド病の病態として、成長期の骨と筋肉の成長速度のアンバランスが関与している可能性が示唆されています。