【夏を乗り切る!】お灸で胃腸から免疫力アップ!感染症・体調不良に負けない体づくり

日本の7月は、高温多湿な気候に加え、冷たい飲食物の摂取や冷房による体の冷えなど、胃腸にとって負担の大きい季節です。この時期、胃腸の不調だけでなく、「なんとなく体がだるい」「風邪をひきやすい」といった免疫力の低下を感じる方も少なくありません。実は、胃腸の健康と免疫力は密接に結びついており、夏の胃腸トラブルの改善にお灸が効果を発揮する理由の一つに「免疫力の向上」が挙げられます。

今回は、胃腸と免疫力の関係に焦点を当て、お灸がどのようにして胃腸から免疫力を高め、夏の感染症や体調不良に負けない体づくりをサポートするのかを詳しく解説していきます。

1.胃腸は最大の免疫器官である

私たちの体には、外部からの異物(細菌、ウイルスなど)の侵入を防ぎ、排除する「免疫システム」が備わっています。この免疫システムにおいて、胃腸が非常に重要な役割を担っていることをご存知でしょうか?

・腸管免疫
人体の免疫細胞の約7割が腸に集中していると言われています。腸には「パイエル板」と呼ばれる免疫細胞の集合体があり、腸内に侵入した病原体などを認識・排除する最前線の防御システムとして機能しています。

・腸内細菌叢
腸内には、100兆個以上もの腸内細菌が生息しており、善玉菌、悪玉菌、日和見菌のバランスが私たちの健康に大きく影響を与えます。特に善玉菌は、免疫細胞を活性化させたり、免疫のバランスを整える物質を産生したりするなど、免疫機能に深く関わっています。

・ 栄養吸収と免疫
免疫細胞が正常に機能するためには、ビタミン、ミネラル、タンパク質などの様々な栄養素が不可欠です。これらの栄養素は、胃腸で適切に消化・吸収されることで体内に供給されます。胃腸の働きが低下すると、必要な栄養素が十分に吸収されず、免疫細胞の機能が低下する原因となります。

このように、胃腸は単に食べ物を消化吸収するだけでなく、私たちの体を守る「免疫の司令塔」としての役割を担っています。夏の胃腸の不調は、この免疫システムに直接的なダメージを与え、感染症にかかりやすくなったり、アレルギー症状が悪化したりするなど、様々な健康問題を引き起こす可能性があるのです。

    2.夏に免疫力が低下しやすい理由

    7月は、胃腸の不調だけでなく、免疫力も低下しやすい季節です。その主な理由を挙げます。

    ・体力の消耗(夏バテ)
    高温多湿な環境下では、体温調節に多くのエネルギーを費やし、体力が消耗します。食欲不振や睡眠不足も重なり、夏バテの状態に陥ると、全身の免疫力が低下しやすくなります。

    ・冷房による冷え
    過度な冷房は、体表だけでなく内臓を冷やし、血行不良を招きます。血行不良は、免疫細胞が全身を巡るのを妨げ、免疫機能の低下に繋がります。特に、内臓が冷えると、腸の働きが鈍り、腸管免疫に悪影響を及ぼします。

    ・睡眠不足
    熱帯夜などで十分な睡眠がとれないと、自律神経のバランスが乱れ、免疫細胞の活動が抑制されます。睡眠中に分泌される免疫を活性化させるホルモンの分泌も低下し、結果的に免疫力が低下します。

    ・栄養不足・偏り
    夏バテによる食欲不振から、冷たくてさっぱりしたものや、手軽に食べられる麺類などに偏りがちです。この栄養バランスの偏りは、免疫細胞の材料となる栄養素の不足を招き、免疫力の低下に直結します。

    ・ストレス
    暑さや体調不良そのものがストレスとなり、自律神経の乱れを引き起こします。ストレスは免疫機能を抑制するホルモンの分泌を促すため、免疫力低下の大きな要因となります。

    3.お灸が「免疫力の向上」に働きかけるメカニズム

    お灸は、艾(もぐさ)を燃焼させ、その温熱刺激を皮膚を通して体内に伝える施術です。この温熱刺激が、どのようにして免疫力を高めるのでしょうか。

    ・体温の上昇と免疫細胞の活性化
    免疫細胞は、体温が適度な範囲で最も活発に働くとされています。お灸による局所的、そして全身的な温熱刺激は、体温をわずかに上昇させる効果があります。体温が1℃上がると免疫力が数倍になるとも言われるほど、体温と免疫力には密接な関係があります。お灸で体が温まることで、リンパ球やマクロファージなどの免疫細胞の働きが活性化され、異物に対する防御機能が高まります。

    ・血行促進と免疫細胞の輸送
    免疫細胞は、血液やリンパ液に乗って体内を巡り、パトロールしています。お灸による温熱刺激は、血管を拡張させ、血行を促進します。これにより、免疫細胞が効率よく全身、特に胃腸などの主要な免疫器官に運ばれやすくなります。また、炎症を起こしている部位にも速やかに免疫細胞が到達し、回復を早める助けとなります。

    ・自律神経の調整と免疫バランス
    以前の記事でも解説したように、お灸は自律神経のバランスを整える効果があります。自律神経は、免疫システムとも深く連動しており、特にリラックス時に優位になる副交感神経は、免疫細胞の活性化に良い影響を与えます。ストレスや過労で交感神経が優位な状態が続くと免疫力が低下しやすくなりますが、お灸によるリラックス効果は副交感神経を優位にし、免疫機能のバランスを整え、正常な免疫応答を促します。

    ・腸内環境の改善と腸管免疫の活性化
    お灸による胃腸への血行促進や蠕動運動の正常化は、腸内環境の改善に寄与します。腸内環境が整い、善玉菌が優位になることで、腸管免疫が活性化されます。善玉菌は、短鎖脂肪酸などの免疫調整物質を産生し、免疫細胞の成熟や活性化をサポートします。胃腸の健康が直接的に腸管免疫の強化に繋がり、結果として全身の免疫力向上に貢献します。

    ・自然治癒力の向上
    お灸は、体が本来持っている自然治癒力を引き出すことを目的としています。温熱刺激によって、体内の様々な生理機能が活性化され、免疫システムを含む自己修復能力が高まります。これにより、病気になりにくい体、病気になっても回復しやすい体へと導かれます。

    4.お灸で期待できる具体的な変化

    免疫力向上を通じたお灸の施術は、夏の胃腸の不調だけでなく、体全体の健康に対して以下のような具体的な変化をもたらすことが期待できます。

    ・風邪や感染症にかかりにくくなる
    免疫細胞の活性化と全身への効率的な輸送により、外部からの病原体に対する抵抗力が高まります。

    ・回復力の向上
    万が一風邪などをひいてしまっても、免疫力が高まっているため、症状が重症化しにくく、回復が早まります。

    ・アレルギー症状の緩和
    免疫バランスが整うことで、花粉症やアトピーなどのアレルギー症状の過敏な反応が緩和されることがあります。

    ・全身の倦怠感の軽減
    免疫力が向上し、体調が安定することで、夏バテによるだるさや疲労感が軽減され、日中の活動性が高まります。

    ・ストレスに対する抵抗力の向上
    免疫力と自律神経のバランスが整うことで、ストレスに対する体の適応能力が高まり、精神的な安定にも繋がります。

    お灸で胃腸から免疫力をアップして夏を乗り切ろう!

    日本の7月は、胃腸に負担がかかりやすく、それに伴い免疫力も低下しやすい季節です。特に、胃腸は体最大の免疫器官であり、その健康は全身の免疫機能に直結しています。冷え、疲労、ストレスなどが複合的に作用し、胃腸の働きと免疫システムの両方に悪影響を与えます。

    このような夏の体調不良に対し、お灸は「免疫力の向上」という側面から強力なサポートを提供します。お灸の温熱刺激は、体温を上昇させ、免疫細胞を活性化させるだけでなく、血行促進、自律神経の調整、そして腸内環境の改善を通じて、腸管免疫を強化します。これにより、体本来の防御力が引き出され、感染症や体調不良に負けない、健康な体づくりに貢献します。

    夏の免疫力低下は、見過ごされがちですが、その後の季節の体調にも影響を及ぼします。お灸は、薬に頼らず、体の内側から免疫力を高めることができる伝統的な治療法です。ただし、お灸は専門知識と技術を要する施術であるため、自己判断で行うのではなく、経験豊富な鍼灸師に相談し、ご自身の体質や症状に合わせた適切な施術を受けることを強くお勧めします。お灸の力を借りて、胃腸から免疫力を高め、夏の厳しい季節を元気に乗り切りましょう。

    次回は、「お灸で目覚める自然治癒力!胃腸から全身を健やかに」を掲載する予定です。

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    1. 概要 背景 夜泣きは、夜間、特定の時間帯に、あるいは一晩中、断続的あるいは継続的に子どもが泣いたり騒いだりする一般的な状態である。小児の睡眠障害としては一般的であり,親からの医療的援助が強く求められるが,夜泣きに対する非薬物療法の一つとして小児鍼治療がある。本総説は、夜泣きに対する小児鍼の有効性と安全性に関する文献をレビューすることを目的とした。 方法 は以下の通り。文献検索は,PubMed,Cochrane Controlled Register of Trials(CENTRAL),Allied and Complementary Medicine Database(AMED),中国国家知識基盤データベース(CNKI),万芳データベース,中国科学技術雑誌データベース(VIP),OASIS,研究情報サービスシステム(RISS),National Digital Science Library(NDSL)で開始日のわかるものから2020年12月28日時点まで実施した。2名のレビュー著者は、検索で得られたすべての関連論文のタイトルと抄録を独立にスクリーニングし、適格な論文を選択した。症例報告や事例研究を含む、夜泣きに対する鍼灸治療に関する臨床研究のすべての変種を適格とした。データは、標準的なデータ抽出フォームを使用して、2人のレビュー著者が独立して抽出した。抽出されたデータは表形式で示され、叙述的に考察されている。 結果 は以下の通り。病院の外来から募集した小児2,324人をサンプルサイズとする12件の研究(ケースシリーズ10件、ケースレポート2件)を対象とした。すべての研究が中国本土で実施され、唯一の介入として鍼治療が行われた。主要評価項目である夜泣きに対する鍼治療の有効率は,9つの研究で100%,1つの研究で95%,別の研究で94%,残りの研究で86%と報告された。副次的アウトカムについては,1つの研究では再発率が14%であったが,別の研究では治療後の再発率が11%であったと報告されている。ほとんどの研究で追跡調査は行われていない。どの研究でも有害事象の可能性は報告されていない。ほとんどの子供が1回の治療で回復した。一般的に最も多く選択されたツボはEM30四缝とPC9中衝のツボであった。 結論 本総説 は、小児鍼が夜泣きに対して有効な治療法である可能性を示唆し、さらに検討する価値があると思われる。

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